仕事で、エルフードとメルズーガの砂漠に出掛ける機会を得た。マラケシュからティシュカ峠、ワルザザートを経て1日で600キロ近くを走破する山あり谷ありの旅は、もはや過酷ではあるが、やはり壮大な景色の移り変わりは何回見ても素晴らしい。高アトラス山脈付近ではグランドキャニオンさながらの豪快な岩肌、そこに見え隠れするベルベルの家やモスク。緑が豊かなカスバ街道を抜けきれば、一転して果てしない大地。フッターラと呼ばれる数世紀前の原始的な水道を掘った穴が延々と続く。モロッコの山岳や砂漠地方に道らしい道が出来たのは、フランス植民地時代を経てからだが、その前にもこんな何もないような所にも人が・・・と思うと人間の生命力と勇気に感動する。
さて、エルフードに着き、4WD車に乗り換えて南に1時間、メルズーガ砂漠に向かう途中からは、ついにもう自動車用の道はなくなり、単なるピストに4WD車の通った無数の跡があるのみ。降り注ぐ日差しはまぶしく、暑いくらいだ。運転手が「ここが、何度もパリダカ・ラリーが通った“道”だよ。僕は3回見たことがある。ものすごい速さで、砂漠へと吸い込まれていくようなんだ。それは素晴らしかったよ!」と教えてくれた。2004年もここを通るのだろうか、まだ公式ルートは明らかではないが、目の前にはサハラの砂丘が広がって、世界最高峰のラリーが来るのを待っているように見える。
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彼方に横たわるサハラ砂漠 「ヤスミナ」というロッジの横を 通過したという情報あり |
実の収穫の終わった秋のナツメやし林が延々と続く/リッサニ |
エルラシディア空港 ここで何回もラリーのキャンプが張られた |
一方、エルフードから北へ1時間のところにエルラシディア空港がある。まるでプライベート空港のような小さなものだが、ここは何回もパリダカ・ラリーの中継地となっている。タイヤや食糧、あらゆる必要資材が飛行機で直接持ち込まれ、空港横の空き地では各国の4WD、トラック、バイクが陣営を作ってキャンプを張る。「その光景は素晴らしいよ、熱気が伝わってくるんだ」と空港の職員さんが熱く語った。ラリーは今年はモロッコを通らなかったので、来年こそは!とお正月が待ち遠しいのだと言う。どうもパリダカ・ラリーというものは、見てしまった者の心を虜にしてしまう不思議な魔力を持っているらしい。
さて帰り道、ティシュカ峠でものすごい雪に見舞われた。2000メートルの標高のこの辺りでは、雪は珍しいものではないが、この季節にこんなに降るのは久しぶりだ、と運転手も驚く。夏に地中海全域を襲った猛暑のあおりで、今年の冬は山岳地帯は冷え込むかもしれないそうだ(そんな時、砂漠地帯では強い風が吹き荒れるらしい)。除雪車がやってくるまで数十分間、大自然のパワーを黙って見つめるしかなかったが、それにしても、今日だけでも色んな光景を見たなあ・・・ハードだったが、心には不思議な思い出となった1日だった。パリダカ・ラリーの魔力に少しだけ触れたせいかもしれない。
Text&Photo 藤田麻里
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雪景色のティシュカ峠 |
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