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Produced by MARI FUJITA
夕方5時。ラマダン期間中のこの時間は、モロッコ中が忙しい。断食明けの日没時の食事「フトール」に向かって気分はまっしぐら。皆が一斉に家に帰って食事をしようとするため交通渋滞が巻き起こり、仕事中の人たちも職場近くの商店にパンやスープを買いに走る。何があってもどんな場所でも、日没時(5時45分)を目指してもうモロッコ人の頭の中は「さあフトールだ〜!」で一杯なのだ。そんなある日、私はいつもなら昼間乗るカサブランカからマラケシュへの列車の時間をわざとずらし、夕方5時15分発に乗る事にしてみた。「列車の中のフトールの様子」を調べるためである。さて5時頃、カサブランカ・ボワイヤージュ駅に着くと、通常混み合う構内には人もまばら。フトール・タイムに列車に乗るのは避けたいのか何なのか、エネルギーの切れかけたモロッコ人たちが力なくベンチに座り、哀愁までもが漂っている。左写真:いつになく寂しいカサブランカ駅いざ列車に乗ると、2等コンパートメントはガラガラ。しかも陽気なモロッコ人の事、いつもならおしゃべりや笑い声が充満しているはずなのだが、今日は水を打ったように静かでその落差が激しすぎる。そんなにグッタリして大丈夫なのか?!しかし、その斜陽の差し込む静寂の時間は20分程度しかなかった。延々と続く丘陵地帯の彼方にすっかり日が沈み、草を食む羊の群れもいなくなった頃(羊飼いも、きっと家にフトールを食べに帰ったのだろう)、にわかにあちこちからゴソゴソという音と共に、ぷーんと漂うパンの匂い。隣に座っていた寡黙な男達の渋い一団が腕時計を確認して「ビスミッラ(神の御名において)」とつぶやき、食事を始めた。5時45分、「今だ!」私は、誰もいない廊下に出て、次々にコンパートメントを覗いてみた。どのコンパートメントも全員パンやジュースやナツメヤシを取り出し、嬉しそうに食べる顔、顔!さっきまで半開きだった目が急に生き生きし始め、寡黙だった渋い男達はただの騒がしいお父さん集団と化し、ついには歌声まで出始める始末。その急変ぶりは、ほとんどコントのようである。5輌先まで行ったところで、あまりにも全シーンが同じなので笑いが止まらなくなり調査を断念。予想どおりではあるがおよそ70コンパートメント約200人の旅客は全員同時に「食べていた!」(→食べていた率99.5%。一人だけ廊下でタバコを吸っていた。断食中は勿論タバコも禁止)ちなみにコーランには「旅人は断食を免除される」とあるが、苦難続きの命をかけた旅でもない限り、イスラム教徒はラマダンをどこでも敢行する。こうして全車両、神への感謝と至福で一体感すら生まれているマラケシュ・エキスプレスは、満月が照らし始めた「フトール・タイム」の大地をひた走るのであった。Text&Photo 藤田麻里 夕方5時のカサブランカ駅構内車掌さんの手にもフランスパンが! 列車到着を待つ車内販売のワゴン本日唯一最大の稼ぎ時になりそうだ 車窓からは明るい月夜の風景午後6時
夕方5時。ラマダン期間中のこの時間は、モロッコ中が忙しい。断食明けの日没時の食事「フトール」に向かって気分はまっしぐら。皆が一斉に家に帰って食事をしようとするため交通渋滞が巻き起こり、仕事中の人たちも職場近くの商店にパンやスープを買いに走る。何があってもどんな場所でも、日没時(5時45分)を目指してもうモロッコ人の頭の中は「さあフトールだ〜!」で一杯なのだ。そんなある日、私はいつもなら昼間乗るカサブランカからマラケシュへの列車の時間をわざとずらし、夕方5時15分発に乗る事にしてみた。「列車の中のフトールの様子」を調べるためである。さて5時頃、カサブランカ・ボワイヤージュ駅に着くと、通常混み合う構内には人もまばら。フトール・タイムに列車に乗るのは避けたいのか何なのか、エネルギーの切れかけたモロッコ人たちが力なくベンチに座り、哀愁までもが漂っている。左写真:いつになく寂しいカサブランカ駅いざ列車に乗ると、2等コンパートメントはガラガラ。しかも陽気なモロッコ人の事、いつもならおしゃべりや笑い声が充満しているはずなのだが、今日は水を打ったように静かでその落差が激しすぎる。そんなにグッタリして大丈夫なのか?!しかし、その斜陽の差し込む静寂の時間は20分程度しかなかった。延々と続く丘陵地帯の彼方にすっかり日が沈み、草を食む羊の群れもいなくなった頃(羊飼いも、きっと家にフトールを食べに帰ったのだろう)、にわかにあちこちからゴソゴソという音と共に、ぷーんと漂うパンの匂い。隣に座っていた寡黙な男達の渋い一団が腕時計を確認して「ビスミッラ(神の御名において)」とつぶやき、食事を始めた。5時45分、「今だ!」私は、誰もいない廊下に出て、次々にコンパートメントを覗いてみた。どのコンパートメントも全員パンやジュースやナツメヤシを取り出し、嬉しそうに食べる顔、顔!さっきまで半開きだった目が急に生き生きし始め、寡黙だった渋い男達はただの騒がしいお父さん集団と化し、ついには歌声まで出始める始末。その急変ぶりは、ほとんどコントのようである。5輌先まで行ったところで、あまりにも全シーンが同じなので笑いが止まらなくなり調査を断念。予想どおりではあるがおよそ70コンパートメント約200人の旅客は全員同時に「食べていた!」(→食べていた率99.5%。一人だけ廊下でタバコを吸っていた。断食中は勿論タバコも禁止)ちなみにコーランには「旅人は断食を免除される」とあるが、苦難続きの命をかけた旅でもない限り、イスラム教徒はラマダンをどこでも敢行する。こうして全車両、神への感謝と至福で一体感すら生まれているマラケシュ・エキスプレスは、満月が照らし始めた「フトール・タイム」の大地をひた走るのであった。Text&Photo 藤田麻里
夕方5時のカサブランカ駅構内車掌さんの手にもフランスパンが!
列車到着を待つ車内販売のワゴン本日唯一最大の稼ぎ時になりそうだ
車窓からは明るい月夜の風景午後6時
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