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Produced by MARI FUJITA
カサブランカから列車に乗って3時間半、マラケシュ駅に着くと、ふわり、と爽やかないい香りが迎えてくれた。構内に植えられたオレンジの並木が、今、花の盛りなのだ。雲ひとつない青空に、たくさんの白い小さな花が風に揺れている。うまく出来たもので、果樹園などにあるオレンジの木は甘い実をつけるが、花はあまり匂いを放たないらしい。逆に、駅にあるこの木には渋い実しかならなくて、小鳥達も(人間も!)果実には見向きもしないが、この爽やかな香りには思わず足を止めてしまう。駅からメディナに向かう途中の大通りのオレンジの並木も、同じく専ら鑑賞用で、町の人達がこの季節の香りを楽しむために植えられているのだ。これらの小さな花は、乾燥させてポプリなどにされる他、「マズハル」というオレンジ・ウォーターや、「ネロリ」という精油になる。肌につけてもいいし、ヨーロッパのアロマテラピーでは、香りによる沈静効果がある事が良く知られている。 どこか高貴な香りだな、と思ったら、このオレンジ・ウォーターは、モロッコの代表的宮廷菓子「コーン・ド・ガゼル」(ガゼルという動物の角の形をした焼菓子)の香り付けに使われているのだった。洋菓子ならば、コワントローなどのリキュールを使うところだろうが、アラブ世界ではお菓子にもお酒は不必要、やわらかな芳香は、むしろ東洋、和菓子にも似た慎ましさがある。「コーン・ド・ガゼル」は年中食べる事が出来るけれど、季節の刹那を味わう為にわざわざオレンジの木陰に持ち出すのも一興。「これも立派な季節菓子なんだな」と感じて、二度おいしい。少し汗をかいた肌に、オレンジの花の風が心地よい。text&photo 藤田麻里 メディナの中心部にある「マラケシュ美術館」内のカフェ。お茶受けには「コーン・ド・ガゼル」を(ミント・ティー10DH、コーン・ド・ガゼル8DH)
カサブランカから列車に乗って3時間半、マラケシュ駅に着くと、ふわり、と爽やかないい香りが迎えてくれた。構内に植えられたオレンジの並木が、今、花の盛りなのだ。雲ひとつない青空に、たくさんの白い小さな花が風に揺れている。うまく出来たもので、果樹園などにあるオレンジの木は甘い実をつけるが、花はあまり匂いを放たないらしい。逆に、駅にあるこの木には渋い実しかならなくて、小鳥達も(人間も!)果実には見向きもしないが、この爽やかな香りには思わず足を止めてしまう。駅からメディナに向かう途中の大通りのオレンジの並木も、同じく専ら鑑賞用で、町の人達がこの季節の香りを楽しむために植えられているのだ。これらの小さな花は、乾燥させてポプリなどにされる他、「マズハル」というオレンジ・ウォーターや、「ネロリ」という精油になる。肌につけてもいいし、ヨーロッパのアロマテラピーでは、香りによる沈静効果がある事が良く知られている。 どこか高貴な香りだな、と思ったら、このオレンジ・ウォーターは、モロッコの代表的宮廷菓子「コーン・ド・ガゼル」(ガゼルという動物の角の形をした焼菓子)の香り付けに使われているのだった。洋菓子ならば、コワントローなどのリキュールを使うところだろうが、アラブ世界ではお菓子にもお酒は不必要、やわらかな芳香は、むしろ東洋、和菓子にも似た慎ましさがある。「コーン・ド・ガゼル」は年中食べる事が出来るけれど、季節の刹那を味わう為にわざわざオレンジの木陰に持ち出すのも一興。「これも立派な季節菓子なんだな」と感じて、二度おいしい。少し汗をかいた肌に、オレンジの花の風が心地よい。text&photo 藤田麻里
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