モロッコの古都、フェズとマラケシュをそれぞれ、10日づつ位い回ってきました。まずは西の都マラケシュ。ヨーロッパが異常気象のお陰で犠牲者が続出していた正にその時、マラケシュは釜地獄の状態にあった。日中気温45度以上、、、、、。本能と熱気が渦巻き情念の炎を吹き上げる狂気のフナ広場を横目にスークから暗闇へと続く迷宮への旅はその行為自体が狂気、この旧市街の雑踏は人とバイクと動物が飛ぶように行き交い、その僅かな隙間を私がおずおずと歩く。見える物全てが無秩序に動き回り、現実として目の前に現れ瞬時に消え去る.情緒など在ったものではない。観光客相手のバブル的無法地帯フナ広場の泡が旧市街全体に振りかかりそこに住む庶民の生活にまで影響を及ぼしどうも落ち着きのない遊技場のような街に変貌しているように見えるのは私だけの偏見でしょうか。さてそんなマラケシュの旧市街に最近古い邸宅を改装してプチホテルとでも言うのか、リアドが続々と開業している。リアドとは大邸宅と言う意味なので、プチ、即ち小さな、、、、と言うのは間違いでちょっとした宮殿をも意味する。以前、桃井かおり氏の取材旅行の際、マラケシュで、リアド オレンジという邸宅ホテルを手配したがそれはそれは、大邸宅でした。その時の取材記事は朝日新聞社刊、月刊アサヒグラフ パーソン、2002年6月号に載っていますので興味の在る方は一読して下さい。さてリアドのオーナーは当然モロッコ人と思っていると、さにあらずフランスや、ベルギー、アメリカ人と多彩、外国人がリアドを経営している場合も多く、センスの良いプチホテルが人気を博している。雑踏を抜け狭い路地を入ればそこは、ヨーロッパともモロッコとも異なる異邦の空間が扉の奥に広がる。一方、東の雄、モロッコ最古の都、フェズのリアドはどうか。言うまでもなくこの旧市街メデイナの凄さは世界一。迷路が暗い闇の中にまで果てしなく続き、旧市街全体が切れ込んだ谷間にコケの群生の如くびっしりとへばり付き中世より今の世に時を越え生き続ける不死鳥。モロッコの建築文化の粋を極めた無数の宮殿とも見紛う大邸宅が薄汚れた壁の奥にひっそりと朽ち果てる様を私は過去22年間、時の経過と共に見てきた。”あと10年もすれば、かっての邸宅はほぼ完全に消え去ってしまう”、、、。と嘆くのはメデイナの奥、ネジャリン フォンドク広場で代々骨董屋を商う、セミール氏。由緒在る旧市街の邸宅を形成する重厚な門や木工彫刻で彩られた家具類が持ち込まれ売り払われる姿に、商売とは言え複雑な心境だと言う、こうしたモロッコの貴重な文化遺産が安易に売り払われ、滅び行く現状には複雑な背景が入り乱れている。かっての豪邸もその家族は便利で住み易い新市街や大都会カサブランカ、ラバト辺りに住居を移し、そこに住まざるを得ない年寄り、遠縁や管理人に旧邸を託す。また有り余る部屋を間貸し日銭を稼ぐ。一度間貸しした家は荒れ放題になり廃墟と化するのも時間の問題となる。金に困った住人が貴重な家財を密かに売り払ったり、またその歴史的価値を見出せない住人が古くなった門を売り、鉄製の門に代えてしまったりと見るも無残なお屋敷が現れる。かって、現国王のお爺さんにあたる、モハメッド五世が一時身を寄せた大豪邸”ダール マックリー”も今では貧しい間借り人が暮らす、スラム状態。フェズの旧市街全体がユネスコの世界遺産とは言え、文化財保存には膨大な費用が要るので国の予算にも限りがあるだろうが今文化財の保護に本腰を入れないととり返しのつかない事になるのは明白である。ところが、最近、そうしたかっての豪邸を買い上げ、再び美しい姿に蘇らせている人達がいる。彼らこそがリアドを営むモロッコ、フランス、アメリカからの人々.現在フェズの旧市街には20件余りのリアドが在る。そのうち、フェズの豪邸を見たければリアドに泊まるしかないといった日も遠くはないと思う。今回フェズでは10件余りのリアドを見て回った.その中でも他を圧倒した優美な邸宅ホテル、メゾン・ド・ブルーを建設したのはリアドを世に知らしめたパイオニア的存在の、前フェズ市観光局局長、アッバデイ氏。フィガロジャポンでも紹介された彼のリアドは内装1つ1つにも凝って作り上げた逸品に思わず感動。今も中世を生き続けるフェズのイスラム的アラビア風生活を堪能するにはリアドに泊まることをお勧めします。マラケシュかフェズ、どちらのリアドがお勧め?、、、、。難しい質問です。好みもありますが雰囲気で行くならフェズが圧倒的に面白い。一度比べて見て下さい。
Text & Photo by 村川 敏弘
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迷宮都市フェズ全景 |
迷路に立つ物乞い |
マラケシュ、旧市街の光景 |
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美しいモザイクタイルの文様 |
アンダルシアモスクの門 |
旧邸宅のタイル補修 |
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リアド、メゾン・ド・ブルー |
バラエテイーに富んだ食卓 |
金具1つ1つにも洗練さが際立つ |
邸宅ホテル、リアド流行の昨今(2) 選挙と桜
旧市街ラセフ門近くにリアドのお買い得物件があるので見に行かないか、との誘いで出かける。リアド巡りを繰り返す私を客とでも思ったのかあちこちから声が掛かる.物件の入口でオーナーの親父と挨拶を交わす。
著名な商売人で、目付きが鋭く眉毛が分厚い。典型的なフェシーだ。2軒続きの大豪邸に圧倒される。宮殿である。1500平米程。値段はと聞くと2件まとめて日本円に換算すると約五千万円と、日本で狭いマンションを買うことを考えると安いものだろう。"先日この物件を買いたいと言う男がやって来たんだ。その人が手付を打つ前に決断したほうがいいですよ、、、"。と仲介が笑う。実はね、そこの路地の奥でレストランをやっている、そうそう、旧市街で旅行客相手にカーペットを売っている親父でさ、、、なんでも今流行りのリアドを開業したいらしい。ニックネームを”歯抜け”とか言う昨今国会議員になった教養のないお偉い方で、、、、、。まあ私には手の届かない物件なので、そそくさとその場を離れる。再び旧市街の迷路に戻りぶらぶら歩いていると、そこかしこの壁に黒1色刷りのポスターが張り付けある。どうやら今この国で実施されている国会議員選挙の候補者一覧ポスターらしい。ちょっと不謹慎ではあるが、私にはどこかの国の過激派WANTEDポスターに見えてしまう。ふと何人かの候補者の顔に目が行く。あれれ、、、左のがさっき会った”リアドのオーナー”、何人かおいてその右に”歯抜け”。二人の親父が同じ政党のポスターに仲良く写っているではないか。彼らが当選した暁には桜、桜の花がポスターに飾られるのか、それとも私があの物件を買わされた暁に、桜の花吹雪が迷路を舞うのか、、、。知らぬ間に袋小路に迷い込んだようです。早々にホテルに戻り、一眠りしょう。
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朽ち果てる過去の証は美しく |
ふと振り返ると見つめられている 自分がそこに居た |
時の砂に埋没しつつ輝く 匠の閃光か |