カスバの民モロッコの中央部を左から右に連なってそびえる、大アトラス山系は、昔からベルベル族と呼ばれる原住民の故郷であった。7世紀にアラビア半島で興ったイスラムの嵐は、百年を経ずして遥か北アフリカの果ての地にまで吹き荒れることとなったが、この地に生まれ育ったベルベルの人々は、侵略者であるアラブ人とは決して妥協することなく、独自の言語と伝統文化を守り続けて来たのである。 4000メートル級の山々が連なる高アトラス山脈(ハイアトラス山脈)付近は“カスバ”と呼ばれるベルベル人達の住居が、山の中腹や谷間に点在する。カスバは、厳しい自然環境や外敵の侵入から身を守る為に造られた一族郎党の城なのである。土を乾燥させて積み上げられたカスバ内部は、夏場涼しく、また、冬保温の効果があり、とても快適に過ごせるように工夫されている。 人々の生活は、何百年前とほとんど変わることなく営まれ、朝、羊の放牧にでかけ、夕暮れと共に家路を急ぎ、あったかいミント入りの茶を飲んで一日の疲れを癒す。 また週一度行われる市“スーク”は、この地方に住む人にとっては重要な物資の補給と情報交換の場だ。市で売られる牛や羊、ラクダなどが各地から持ち込まれ、広場に集められる。 また普段娯楽のない若者たちには、市は素晴らしい語らいの場を提供する。美しく化粧をしたベルベルの女達が、楽しそうに男達と手をつないで歩き回る姿があちこちで見られ、ここが下界にある厳格なイスラムとは確かに少し異なった場所であることが感じられる。Text & Photo by T.MURAKAWA[国際協力 1990年2月号 掲載文抜粋]
Text & Photo by T.MURAKAWA[国際協力 1990年2月号 掲載文抜粋]
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