フェズの庶民たち2億万長者になった旧市街陶器売り −ハッジ・タジモアティ− フェズでいちばんの金持ちは誰か?と聞けば、必ず出てくる名前がこの人。フェズ鉄道駅から新市街に伸びる正面の道の延長上にそびえる、真新しいモスクとミナレットは、ハッジ所有のモスクである。現在のモロッコの経済、いや政治にまでも影響力を持つフェズ出身者(ファシ)の多くが辿ったサクセストーリーの出発点は、フェズの旧市街であり、ハッジ・タジモアティもまた、迷路の一角で細々と陶器を売る商人にすぎなかった。フェズの町は、フェズブルーと呼ばれる陶器が昔から盛んに生産され、モスクの屋根瓦に使用されたり、あるいは食事の器に使われたりしていた。ハッジは、斬新な柄のデザインを配した料理皿やスープを入れる茶碗を精力的に製造、また、中国風のデザインの器は爆発的に人気を博し、巨万の富を得たという。その後も他の先達とは異なり、商業の都カサブランカに拠点を移すことはなく、フェズを中心にして陶器の生産工場を経営している。日本などとは異なり、社会福祉や病院の設備の遅れる第三世界モロッコにあって、ハッジ・タジモアティは大衆の生活向上に寄与すべく、さまざまな福祉活動をしているという。ある意味で、欲しいものはほとんど手に入れた彼にとって、最後に欲したものが、自らの名前を半永久的にとどめるモスクの建設であったとしても、なんら不思議ではない。イスラームがこの地に生きつ続ける限り彼の名も生き続ける事であろう・・・。上写真:フェズ市内、建設中のタジモアテイ・モスク写真・文・村川 敏弘 美しい未完の聖域 ハッジ・タジモアテイの原点、フェズの旧市街 天井部分の漆喰を彫る職人 「モロッコの迷宮都市フェス」シリーズ「フェスの庶民たち」は、平凡社刊「モロッコの迷宮都市フェズ」に収録されており、弊社代表 村川がコラムとして、執筆と写真撮影を担当致しました。新しい都市生態学の構想として、神秘のヴェールに包まれたイスラムの古都を読み解いた一冊。異国情緒あふれる都市フェスの姿が、市民たちへのインタビューを通して、いきいきと描かれています。イスラームの宗教施設内部や巡礼風景などの貴重な写真を多数収録。発行/平凡社 著者/米山俊直 写真・コラム/村川敏弘 価格/2500円
フェズの庶民たち2
写真・文・村川 敏弘
美しい未完の聖域
ハッジ・タジモアテイの原点、フェズの旧市街
天井部分の漆喰を彫る職人
TOPに戻る