最近、マラケシュでは「リアド」が大流行。インターナショナルなスタイルのホテルではなく、モロッコの伝統的な雰囲気を味わうことが出来る邸宅ホテル、それがリアドだ。特にマラケシュでは、オアシス特有の豊かな風土と開放的な人々の気質から外国人が多く滞在し、リアドのオーナーもヨーロッパ人が多い。フランス、イタリア、ベルギーなどオーナーのセンスが光る洒落たリアドが勢揃い。
メゾン・ドット(maison d'hote=邸宅)と呼ばれるにふさわしいものから、カジュアルなタイプのものをあわせて、マラケシュには200を超えるリアドがあって、特に個人旅行者に大人気。リアドのあるメディナの路地では外国人カップルが仲良く手をつないで通り過ぎていく光景が普通に見られるようになった。
さて、その「邸宅」の中でもトップ・クラスのリアド「ラ・ヴィラ・オランジェ」を訪ねてみた。
場所はクトゥビアのごく近く、通りに面してほんのさりげない門扉を構えているのだが、バラの花びらの散りばめられた長い廊下に吸い込まれるように入っていくと、急に開けた中庭にはオランジェ(オレンジの木)が茂り、彫刻の施された柱の間を小鳥のさえずりだけが響き、まさに別世界。迎えてくれたフランス人ディレクターのジャンポール氏は、「これが私達の、"マラケシュの小さな天国"なんですよ」とさっそく邸内を案内してくれた。
1930年にマラケシュのある資産家に建てられたこの邸宅は二つのパティオを囲んで部屋が並んでいる。オーナーのべニック夫妻は、フランスで既に二つのホテルを経営するプロフェッショナルで、1997年に改装に着手、デコレーションはマラケシュの持つ素朴さとフランスのモダニズムが巧みにミックスされ、くどすぎず、サービスは洗練されている。創業して間もないというのに評判が評判を呼び、あっという間に「マダム・フィガロ」などヨーロッパの多くのメディアで紹介され、現在では、マラケシュ・リアド界では老舗の風格すら漂うのは、オーナー夫妻のオテリエとしての経験の賜物なのだろう(このリアドには、以前弊社が手配した取材旅行の際、桃井かおりさんも滞在されました)。
モロッコ料理フランス料理共に抜群で、世界中の個人旅行者の憧れのホテルチェーン「ルレ・エ・シャトー」に北アフリカで唯一認定されているのもうなづける。来年からは地中海料理も味わって頂けるよう奔走中、と意欲を語ってくれたジャンポール氏。屋上のテラスからは間近にクトゥビアの塔が見え、夏ならプール、冬なら晴れ渡った青空に雪を頂いたアトラス山脈の風景。開放的で自由なマラケシュらしい「伝統とモダン」のフランス風ミックスを味わうなら是非こちらへ。カップルの方に特にお薦めです。
Photo&Text 藤田麻里